耐震化されているマンションや高さがあるマンションに住んでいる方の中には、地震や水害はそこまで気にしなくていいのでは?と思う方もいるかもしれません。
しかし、地震による地盤の液状化や津波、大雨による浸水や洪水などによって停電や断水が発生すると避難を余儀なくされる場合もあります。さらに道路が水没・寸断すると避難所に行けない可能性も出てきます。
災害が発生したときに適切な行動を取るためにも、ハザードマップを活用して住んでいる地域の災害リスクを正しく理解することが大事です。
ハザードマップには、大雨や地震、津波などの災害が発生したときに、災害の範囲が及ぶエリアや避難所などの情報が掲載されています。
そこで今回は、ハザードマップの見方や、避難経路の確認、地震や洪水から避難するときの注意点などを紹介します。
ハザードマップとは?
ハザードマップとは、自然災害による被害の軽減や防災を目的に、自然災害がどの地域にどんな被害をもたらすかを予測しているマップです。
災害と言っても、自然災害には津波や洪水、土砂災害などさまざまな種類があり、災害の種類によって取るべき行動や備えは変わります。
ハザードマップで住んでいる地域でどんな災害が発生する可能性があるかどうかを知っておくことは、警報や注意報、避難情報が出されたときの迅速・的確な行動につながります。
また、ハザードマップに関連して、2020年8月28日に宅地建物取引業法施行の一部を改正する命令が施行されました。これにともない、不動産業者は消費者に対して「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を事前に説明すること」が義務づけられています。
そのため、これから不動産契約をする場合は事前にハザードマップについての説明がされますが、自分自身で確認することも大切です。ハザードマップの見方を理解して、避難経路や災害リスクをいつでも確認できるようにしましょう。
ちなみに、災害時の避難経路や避難場所、防災機関の情報などを地図化しているのは防災マップと呼ばれています。どちらも国や自治体などが作成していますが、ハザードマップと防災マップをまとめて「ハザードマップ」と公開している自治体も多くあります。
代表的なハザードマップには、国土交通省が運営している『ハザードマップポータルサイト』の「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」の2種類があります。
重ねるハザードマップには洪水・土砂災害・津波・道路防災情報(道路冠水想定箇所・事前通行規制など)が記載されていて、土地の特徴や成り立ちなどを地図や写真に重ねて表示できます。
わがまちハザードマップでは各市町村が作成したハザードマップが閲覧できます。洪水、内水、ため池、高潮、津波、土砂災害、火山、地震の各ハザードマップの公開の有無や、公開している場合は公開URLが表示されます。
住んでいる地域の災害リスクは、この2種類のハザードマップから知ることができます。
参照:国土交通省「不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化 ~宅地建物取引業法施行規則の一部を改正する命令の公布等について~」
ハザードマップから洪水・地震リスクを確認する
ハザードマップを使って洪水や地震リスクを知るためには「重ねるハザードマップ」を使用します。ここでは、大雨による洪水、地震による津波の災害リスクがどれくらいあるのかを、ハザードマップで確認する方法を解説します。
洪水(想定最大規模)
重ねるハザードマップを表示したら、表示する情報の中から「洪水(想定最大規模)」を選んでください。
下記に表示させたい情報の一覧が出てくるので、以下の3つの情報をマップ上に表示させます。
「指定緊急避難場所」
災害対策基本法に基づいて、市町村長が指定した洪水被害に対応する緊急避難場所。
「洪水浸水想定区域」
洪水によって起こる最大規模の浸水想定区域。色ごとに予想される浸水深が変わり、赤色は5~10m、薄紫は10~20m、濃紫は20m以上の浸水が予想されるエリア。
「ため池決壊による浸水想定区域」
大雨や地震によってため池が決壊した場合に浸水が予想されるエリアが青色に色付けされている。
自分が住んでいるマンションがため池、決壊による浸水想定区域に入っているかどうかをチェックして、洪水のリスクがある場合は近くの緊急避難場所について確認しておきます。
洪水ハザードマップは河川の氾濫による浸水を表すものであり、大雨による側溝・下水・排水路の氾濫(内水氾濫)は考慮されていません。
特に、一面がコンクリートに覆われて地面に雨水が浸透しにくい都市部のマンションは短時間の集中豪雨で水害が起こりやすく、近くに河川がなくても内水氾濫によってライフラインが絶たれる可能性があります。
内水氾濫のリスクは内水ハザードマップで確認ができます。
内水ハザードマップは、わがまちハザードマップから住んでいる都道府県と市町村名を選択するとハザードマップの一覧表示が出てきます。あとは、内水ハザードマップの公開URLを選択すると自治体が出している内水ハザードマップが表示されます。
津波
重ねるハザードマップを表示したら、表示する情報の中から「津波」を選んでください。
下記に表示させたい情報の一覧が出てくるので、以下の2つの情報をマップ上に表示させます。
「指定緊急避難場所」
災害対策基本法に基づいて、市町村長が指定した津波に対応する緊急避難場所。
「津波浸水想定」
津波によって起こる浸水想定区域と水深。色ごとに予想される浸水深が変わり、赤色は5~10m、薄紫は10~20m、濃紫は20m以上の浸水が予想されるエリア。
自分が住んでいる場所が津波による浸水想定区域に入っているかどうかや予想される水深をチェックして、津波のリスクがある場合は近くの緊急避難場所について確認しておきましょう。
ハザードマップを使って避難経路を確認する
ハザードマップを使って地震による津波や大雨による洪水から避難するためには、まず以下の2点をチェックしましょう。
- 浸水エリアに入っているかどうか
- 近くの緊急避難場所までの道順
ハザードマップで指定緊急避難場所を表示させてクリックすると「避難場所の住所と名称」「対応している災害の事例」が表示されます。
大雨による災害なら「洪水、内水氾濫、土砂災害」、地震による災害なら「地震、津波」に対応しているかどうかを確認しておきます。
災害によっては避難場所までの道が水没・寸断しているケースもあるので、複数の避難場所を候補にして、避難所までの道のりも複数のパターンを想定しておきましょう。
近くに避難場所がいくつかある場合は、一番近い避難場所を第一候補、二番目に近い避難場所を第二候補など、最低でも第三候補くらいまでは場所と道順を把握しておいてください。
地震や洪水から避難するときの注意点
災害の種類によっては、周囲の状況や被害状況が分かるまでマンションの外に出ない方がいい場合もあります。
特に水害においては、ハザードマップで想定される洪水や津波の最大浸水深が、自分の住んでいる階層の高さよりも十分に低い場合は、避難所に向かうよりも部屋にいる方が安全です。
マンションで困るのは水道、電気などのライフラインの寸断です。水や食料を避難所にもらいにいく必要性が出てくるケースもありますが、状況を確認して安全の確保ができてから行動するのでも遅くはありません。まずは、自分の命を守るための最適な行動を一番に考えましょう。
避難する場合、道路のコンディションが分からない夜は避難している最中に被災するリスクもあるので、できるだけ明るい時間帯に避難をしましょう。
まとめ
災害はいつどこで起こるか分かりませんが、想定される災害の種類や影響はハザードマップを使って確認ができます。
高さがあるマンションは水害には比較的強い建物ですが、状況によっては避難が必要になる場合もあります。避難所の把握をしていないと、どこに避難したらいいかも分かりません。
自分や大切な家族の命を守るためにも、ハザードマップを活用して災害リスクを理解しておきましょう。これから住む場所を考える際にもハザードマップを確認し、災害リスクの少ない地域を探すことも大切です。
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- 編集・発行:株式会社不動産流通研究所
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執筆者プロフィール
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所
愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数 ・防災マニュアルの作成に参画。