これからの「楽器相談」賃貸の仲介とは…?一般不動産会社に意見を聞いてみた!

音楽大学・専門学校周りにある楽器が弾ける楽器可賃貸を専門で扱う不動産会社がある一方、その他多くの不動産会社は数ある物件の一種類として「楽器相談」賃貸を扱っています。不動産会社によって、楽器、防音についての知識は様々です。そこで「楽器を騒音にしない!」をメインテーマに掲げるカナデルームは、このような状況を踏まえ、一般の不動産会社が楽器相談賃貸物件をどのように扱っているか、その様子をざっくばらんに伺ってみました。

取材に応じていただいたのは、神奈川県の葉山にある不動産会社、株式会社ラーの大宮文彦社長です。株式会社ラーは海あり山ありの風光明媚な土地で、賃貸仲介から売買までを行っている不動産会社です。

入居希望者も不動産会社も「楽器相談」賃貸の取扱いに戸惑っている?

──まず、御社では「楽器相談」賃貸をどのように取扱っていますか?

大宮 弊社は、楽器可専門不動産会社でなく、一般物件の仲介を中心に行っています。お預かりした土地や建物を楽器対応として企画にするにはオーナー様の理解が必要です。となると、弊社も防音設備への理解やどれぐらいのコストが掛かるかを計り、オーナー様へ提案するところから始まりますので、お互いにハードルが高いというのが正直なところです。

大宮 葉山という土地柄か、「楽器が弾ける物件を探している」とはっきりおっしゃるお客様は少ないです。どちらかというと、マンション、アパートなどの集合住宅で楽器を弾くことは難しいとお客様がわかっていて、迷惑にならないよう、住宅街からは離れた場所の一軒家を借りるケースがこれまでもいくつかありました。もちろん、のんびりしたこの葉山で静かに暮らしたいと思う住民も多く、私どもが夏に経営している海の家も騒音をどれだけ抑えるかが毎年の課題です。そういった意味でも、住まいで楽器を弾く場合は防音対策が重要なことは理解しています。

楽器相談
ラー株式会社の外壁を飾るアート作品は、写真家のブルース・オズボーンとビーチコミング・アーティスト志喜屋秀壮のユニット「Flip-Flop」のもの

「楽器相談」にも楽器種別や演奏時間帯などをはっきり掲載して有益な情報に

──入居希望者の方が最初から遠慮しているのですね。そもそも楽器可賃貸は、相場から少し家賃が高め。すると、一般物件を「楽器相談」としている物件なら相場通りということで、頼りにしている側面があります。しかし、「楽器相談」という言葉は、何を相談の対象としているのか、どうもわかりにくいようです。「楽器相談」という記載に関して、どのように思われますか?

大宮 一般的には、ヘッドフォンなどを利用して騒音対策をしている入居者が多いのが現状です。ヘッドフォンが使えない管弦楽器はやはり防音設備のあるマンションを選ぶのではないでしょうか。おっしゃるとおり「楽器相談」というのは、非常にあいまいです。最近建てられたマンションで一定の生活防音がされている物件に対して、入居者の間口を広げるために「楽器も考慮します」ということなのでしょう。ただ注意しなければならない点として、演奏の時間帯や楽器種別は「常識の範囲で」という話ではやはり騒音トラブルになる可能性が大きいです。今や入居希望者はインターネットで細かく調べてから不動産会社に来ますから、楽器種別や演奏時間帯の制限などをはっきり掲載することが必要だと思います。これらをセットにして「楽器相談」とすれば、今よりユーザーにとって有益な情報になりますね。

楽器相談
「楽器相談」賃貸には、ヘッドフォンを使って弾ける楽器の人の入居が多いようだ

大宮 また、入居希望者の楽器について、どれくらいの強さ弾くとどれくらいの音量なのかを知っておくことは大切です。そのため、楽器の音量を示すdb(デシベル)などの数値は、お互いに勉強しておかないといけませんね。その点、楽器可賃貸専門の不動産会社は安心でしょう。不動産業界全体としては、賃貸物件も差別化をしていかないと入居希望者が見てくれませんから、「楽器相談」などのニッチな特色を出していくことは大事だと思いますし、多種多様な生活環境が求められる時代ですので、こうした物件が増えることは歓迎されるでしょう。

「楽器相談」賃貸の情報精度を上げる役割を「カナデルーム」に期待したい

──カナデルームでも不動産会社のみなさんに楽器種別・演奏可能時間帯についての記載を呼びかけていこうと思います。さて、カナデルームをご覧いただいて、どう思われましたか?

大宮 弦楽器、管楽器の入り口を設置するといいと思いました。ここから一番近い駅はJRの逗子駅、京浜急行線の新逗子駅です。音楽大学はありませんが、駅周りにはたくさんの音楽教室があるので、他のエリア同様に、「楽器相談」賃貸の需要はあると思います。

楽器相談
周辺に音大はなくても、音楽教室がある地域なら「楽器相談」賃貸の需要はありそうだ。

──今も「カナデルーム」を見ていただいていますが、近隣の賃貸物件では戸建ての掲載が多いですね。一般的にマンションと違って、万が一クレームが出たら、本人が言われますので、自主的な制御が効くと言います。一方、マンションはそうはいきません。管理会社に騒音クレームが届くとそのまま退去の話まで進んでしまう恐れがあると理解していますが、やはり、集合住宅であるマンションは気をつけた方がよいでしょうか。

大宮 その通りです。その上、「楽器相談」賃貸の掲載が多いですね。一般的に不動産会社は、楽器=ピアノをイメージしていると思います。しかし、入居希望者にとって楽器といえば自分の演奏する楽器のことですから、その楽器が相談できるのかどうか、ある程度推測できる記載も加えたほうが良いです。たとえば「弦楽器相談」 「打楽器NG」など。やはり不動産会社として、世の中のニーズに沿った記載になるよう精査しなければならないですね。弊社でも「楽器相談」賃貸を取り扱う場合は注意するよう心がけます!

大宮 一般的な話ですが、低家賃アパートなどはもう入居者希望者がいないんです。若い人でさえ、もう少し高くてもキレイなお部屋に住みたいというのが現状です。そういう意味は、オーナー様の理解があれば、楽器可賃貸への転換も一つの選択肢ですね。
あと、ヘッドフォンは耳に悪そうですね。本人も弾きながらだから、どんどん音が大きくなって(笑)普通に音楽を聴いているのとはわけが違いますね。演奏者のみなさん!耳を大切にしましょう!

今回は、一般の不動産会社の社長さんからお話を伺うことができました。「楽器相談」賃貸の情報提供には、不動産会社の立場からもまだまだ課題があることを教えていただきました。また、同時に、楽器可賃貸が増えない理由も垣間見たような気がします。カナデルームへの応援をありがとうございました。

この記事を書いた人

編集部 中根
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