ギターの音はピアノより大きい?実際に騒音計で音量を測ってみた!【ギタリストのためのお部屋探し】

こんにちは!ハードロックからR&Bまで様々なジャンルをこよなく愛するギター担当編集Tです!平日はカナデルーム編集部でお仕事をしながら、休日はバンドマンに大変身!ここでは、そんな現役ミュージシャンの視点で、楽器とお部屋にまつわるコラムをお届けします。

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ピアノOKの楽器可賃貸でも、ギターはNG?

さて、今回は「お部屋探しとギターの音量」のお話です。

数年前、僕が引越し先のお部屋を探していたときのこと。ネットで見つけた楽器可物件の物件について不動産会社にお問い合わせをしたところ、担当の方から「このお部屋はピアノはOKですが、ギターはNGです」と伝えられたことがありました。

実は、これはギタリストあるある話で、楽器可・相談可でピアノなどがOKの物件でも、なぜか「ギターはNG」となっていることが多いんですよね。

実際にギターの音がピアノの音よりずっと大きいのであれば、それも仕方ないことかもしれませんが、本当にそうなのでしょうか?昔からある「ギター = とにかく音が大きい」というイメージが原因という気も……?そもそも、ギターやピアノの音量ってどれくらいの大きさなんでしょうか?

騒音計でギターの音量を測ってみた

僕はギターを弾くので「ギターの音量はだいたいこれくらいの音量」と感覚ではわかっているものの、具体的な音量の数値については知識がなく……。「それなら実際に音量を測ってみよう!」ということで、カナデルーム編集部で騒音計を用意して、実際にギターの音量を測ってみました。

今回は1分間のシンプルなコード曲を演奏して、演奏中の音量を測定しました。測定した場所はカナデルーム編集部のオフィスと、”編集T”こと僕の自宅です。

音量の測定にはFUSO社の「SDカード付騒音計」を使用。楽器から1m離れた場所に三脚を立てて、騒音計を固定して測定しました。(※1、※2)

※1)騒音計の設定は1秒ごとの音量を記録するようにサンプリングレートを設定し、人間の聴感に合わせた補正を行うA特性に設定しました。音量の小数点第二位以下は切り捨てです。

※2)実際の建築現場などでの音量測定には厳密な測定ルールがあり、正確な音量の測定には専門知識が必要です。また、楽器の種類や弾き方、演奏する部屋の広さ、壁の材質などでも音量は変わります。本記事の楽器の音量データはカナデルーム編集部による独自の測定値なので、あくまで参考値としてお読みください。

カナデルーム編集部オフィスでの音量測定の様子
カナデルーム編集部オフィスでの音量測定の様子

音量の測定には編集T自慢の愛機が登場!ビンテージ・フェンダーの鳴りはいかに?

今回、音量を測定したのはギターの中では最もポピュラーなアコースティック・ギターエレキ・ギターの2種類です。

アコースティック・ギターはTaylorのGrand Orchestraシリーズを使用。普通のアコースティック・ギターよりもボディーが大きく、音の鳴りも少し大きめのタイプです。

Taylor Grand Orchestraタイプのアコースティック・ギター
Taylor Grand Orchestraタイプのアコースティック・ギター

エレキ・ギターはFender USAの1974年製ビンテージのTelecaster Deluxe!僕が大切にしているメイン・ギターです。ギター・アンプは自宅用に使っているVoxアンプ(30W程度)を使用しました。エレキ・ギターはアンプ無しの生音とアンプありの2パターンを測定しました。

Fender USA製、Telecaster Deluxe('74)
Fender USA製、Telecaster Deluxe(’74)

なんとギターの音量はピアノより小さいという結果に!!

さて、実際に2種類のギターを演奏し、音量を測定した結果は以下の通りでした。

普通の強さで演奏した場合のギターの音量

楽器 平均音量(dB) 最大音量(dB)
アコースティック・ギター 77.5 93.2
エレキ・ギター(生音) 68.8 72.4
エレキ・ギター(アンプあり) 85 91.2

まずは、ピックを使って「普通」の強さで演奏した場合の音量から。ここでの「普通」の強さは、普段の練習やライブなどで自然に演奏する程度の強さをイメージしてもらえればOKです。

また、ギター・アンプの音量は、休日などに僕が自宅で演奏するときの音量セッティングを目安にしています。ちなみに、自宅は楽器可の鉄筋コンクリート造のマンションで、建物が電車の線路や踏切から近いため、一般的なマンションよりは生活音に寛容な物件だと思います。

環境省や東京都環境局が公表しているデータでは「ピアノ」の音量は約80〜90デシベル(dB)程度とされています。一方で、一部の楽器メーカーや防音施工会社が公表しているデータでは、ピアノの音量を100デシベル(dB)前後とするケースも多いようですね。そもそもピアノの音量は演奏者(プロ、アマチュア、子供)やピアノの種類(アップライト・ピアノ、グランド・ピアノ)によっても変わるものなので、ここではピアノの音量を約80〜100デシベル(dB)の範囲として考えたいと思います。

さて、今回ギターの音量測定の結果は以下の通りでした。

・アコースティック・ギターが77.5デシベル(dB)
・生音のエレキ・ギターが68.8デシベル(dB)
・アンプありのエレキ・ギターが85デシベル(dB)

意外なことに、どのパターンでもギターの音量はピアノの音量の範囲である80〜100デシベル(dB)に収まっていました。

特に、「アコースティック・ギター」と「生音のエレキ・ギター」の平均音量はピアノの音量より小さい数値になりました。最大音量を比較しても、ほぼピアノの音量の範囲に収まる結果となっており、少なくともギターは普通に演奏すればピアノよりも小さい音量で演奏できる楽器と言えそうです。

アコースティック・ギターの音量には少し注意が必要

普通に弾く分にはピアノより音が小さいことが分かったギターですが、やはり本気でギターを鳴らしたら結構な音量が出るのでは……?僕は演奏時の音量には普段からかなり気をつけていますが、人によってはノリノリで弾いているうちに音が大きくなってしまうことがあるかもしれません。

……ということで、次は、思いっきり大きな音を出すことを意識してギターを弾いた場合の音量を測ってみました。ただし、アンプありのエレキ・ギターで思いっきり演奏すると、さすがにご近所への迷惑になってしまいそうだったので、エレキ・ギターについては生音のみの測定としました。(いずれスタジオなどで測定して、ご報告したいと思います。)

かなり強めに演奏した場合のギターの音量

楽器 平均音量(dB) 最大音量(dB)
アコースティック・ギター 84.3 99.8
エレキ・ギター(アンプ無し) 73 76.6

普通の音量で演奏した場合と比べると、かなり強めに演奏したアコースティック・ギターでは約7デシベル(dB)、生音のエレキ・ギターでは約4デシベル(dB)程度、平均・最大音量が大きくなりました。

アコースティック・ギターは最大音量が99.8(dB)で、ピアノ演奏時の音量の上限と同じくらいの数値でした。一方で生音のエレキ・ギターは、平均・最大音量ともにピアノよりも小さな音量に収まっていました。普通に演奏する分にはピアノより小さめの音で収まるギターも、全力で演奏するとかなり大きな音量が出てしまうようです。

ちなみに、一般的には100デシベル(dB)というと、「犬の鳴き声」や「人の大声」と同じくらいの音量とされています。ギターでもピアノでも、大きい音量での演奏には注意が必要ですね。

音量100デシベル(dB)は犬の鳴き声と同じくらいの音量です。

演奏する音量や時間帯への配慮は大前提!

ここまで2種類のギターを演奏した際の音量データをご紹介しましたが、アコースティック・ギターとエレキ・ギターは演奏方法やギター・アンプの有無で音量が大きく変わるものの、普通に弾く分にはギターはピアノよりも音量が小さいという結果になりました。

例えば、生音のエレキ・ギターについてはテレビの音量と同じくらい(約70デシベル(dB))ですから、よほどの深夜に弾かない限りは問題になることなさそうですし、アコースティックギターについてもピアノとほぼ同じくらいの音量で演奏できるので、ピアノ可物件の演奏ルール(演奏する時間帯など)に気をつければ問題なさそうです。

もちろん、エレキ・ギターでアンプの音量を上げて演奏すればピアノ以上の音量を出すことはできますし、アコースティック・ギターをがむしゃらにかき鳴らしてしまうとかなり音量が出てしまうことは確かなので、演奏の仕方や音量のセッティング、演奏する時間帯には気をつける必要があります。

ただ、単純にギターとピアノとの音量の比較をした結果では、音量的にはギターはピアノより小さい傾向にあると言えるので、少なくともピアノOKの楽器可・相談可物件については、音量に配慮するというルールを前提に、ギターもOKとしては良いのではないかなと思います。

カナデルームでギタリストがお部屋探しをするときのポイント

残念なことに、カナデルームをはじめとする多くの物件検索サイトでは、ピアノの演奏可・相談可物件の割合が多く、ギターの演奏可・相談可物件は少ないか、そもそもギターに関する条件の記載がない場合が多いのが実情です。

ギタリストがお部屋探しをする際は、まずピアノが演奏できる物件を探して不動産会社にお問い合わせをし、演奏の仕方に気をつければギターとピアノの音量がほとんど変わらないこと、演奏の時間帯や演奏時の音量に気をつけることを説明しながら、お部屋でギターを弾かせてもらえないか交渉してみてください。

ピアノが相談できる物件を探す

また、通常のピアノOKの物件と比べて全体の数は多くありませんが、ピアノなどが24時間演奏ができる物件、防音室付きの物件もあります。これらの物件は、防音設備が整っていることが多く、ピアノ以外の楽器演奏の相談を受け付けていることも多いので、そういった物件を探して不動産会社の方に相談してみるのも良い手ですね。

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誰でも気軽に楽器を演奏できる社会を目指して

今回はギター演奏の音量を実際に測定し、日常の生活音やピアノの音の音量を比較しながら、ギターのお部屋探しのポイントを考えてみました。

現在、特に都会などではギターを含め、気軽に楽器を演奏する環境が整っているとはいえない状況ですが、少なくとも演奏する側が楽器の特徴について説明したり、騒音トラブルにならない方法を考えながら不動産会社の方に相談していくことができれば、ギターや楽器に対する理解が広がり、イメージも変わってくるのではないかと思います。

ギターを気軽に演奏できるお部屋がもっと増えて、音楽を楽しみやすい社会になっていくといいですね!

参考資料

「生活騒音」東京都環境局
「生活騒音の現状と今後の課題」環境庁
「騒音・振動とは」新宿区
YAMAHA「アビテックスの遮音性」
防音対策.com

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