ベース初心者の方に、ベースのメンテナンス方法をご紹介!
今回は、多くのプロベーシストが通う名店・北新宿のベース/ギターショップ「Guitar Shop Barchie’s(バーチーズ)」代表の千葉俊之さん、楽器の修理・営業担当の齋藤大輔さんのご協力のもと、楽器のプロの目線からベース・メンテナンスの基本について教えていただきました!
記事の最後に詳しい動画があるので、そちらも参考にしてみてくださいね。
※取材時、用意したベースによって必要なメンテナンスが異なったため、複数のベースを使用して撮影を行いましたが、記事中では、一連のメンテナンス作業として紹介しています。白いベースは弦交換、赤いベースはボディーやネックの掃除を行いました。
ベースの各部名称
ベースメンテに必要な道具。プロはどう選ぶ?
楽器のメンテナンスでは適切な道具を正しく使うことがとても大切です。そこで、まずはお二人にベースのメンテナンスに必要な道具と、道具の選び方についてのアドバイスをいただきました。
◎ニッパー
齋藤 弦を切るためのニッパーは、金属線を切れるものを選びましょう。ベースの弦はとても固い金属なので、プラモデル用のニッパーなどを使うと刃こぼれすることがあります。
千葉 「ピアノ線カッター」と呼ばれる道具を使ってもOKです。どちらも楽器店や東急ハンズなどで手に入るので探してみてくださいね。
◎六角レンチ
千葉 六角レンチは、楽器を購入したときに付属品として付いてくるもので大丈夫です。もし六角レンチが手元になく購入する場合には、六角レンチの規格には複数の種類があることに気をつけてください。例えば、アメリカはインチ(inch)規格、日本やメキシコはミリ(mm)規格など、楽器が製作される国やパーツの供給元の国によってネジ穴のサイズが異なります。
齋藤 インチ規格とミリ規格を両方持っておくと良いですね。こちらも東急ハンズで、10本セット1,000円くらいのものを購入することができます。少しお値段が高くなりますが、ボンダス(BONDHUS)の六角レンチは使い勝手が良いのでオススメ。バーチーズでも使用しています。
◎ウエス/クロス
千葉 ウエスとは、余った布やTシャツの切れ端などの古布のことです。市販のクロスで全てのメンテナンス行うこともできますが、お値段も高いので、汚れを取ったりするときに使うのはウエスやティッシュペーパーで十分だと思います。
齋藤 ただし、固い素材の布でボディーを磨くと塗装に傷がついてしまう恐れがあるので、塗装面を磨くときは楽器用のマイクロファイバー製クロスなどを使ったほうがいいでしょう。
◎レモンオイル/オレンジオイル
齋藤 レモンオイルやオレンジオイルの使い方には注意が必要です。酸性のレモンオイルやオレンジオイルは使い方を間違うと金属パーツの状態を悪化させてしまいますし、ボディーの塗装を溶かす石油系成分が含まれている場合もあります。特に成分表に「第二石油類」と書いてあるオイルは揮発性があり、木が本来持っている油分・水分を奪って状態を悪化させてしまいます。
千葉 これらのオイルはしつこい汚れを落とすのにとても便利ですが、適切な場所に適度な量で使うのが大前提ですね。オイルの誤った使い方によるトラブルでバーチーズに持ち込まれる楽器も多いので、初心者の方はなるべくレモンオイルやオレンジオイルを使わないほうがいいでしょう。
齋藤 諸説あるレモンオイル、オレンジオイルの使い方の違いですが、バーチーズではどちらもなるべく塗装面には使わないようにしています。例えば「ラッカー塗装にはオレンジオイルを使ってもOK」という話をよく聞きますが、オレンジオイルも種類によっては説明書に「ラッカー塗装には使わないように」と書いてあったりします。大手ギターメーカーでも、なるべくこれらのオイルを使わないようにとアナウンスしていたりするので、避けた方がいいと思います。
4ステップで完璧!プロのメンテナンスを学ぼう
では、実際に齋藤さんにベースをメンテンナスしていただきましょう。 1. 古くなった弦を外す / (0:11〜) 2. ボディーを掃除する / (0:46〜) 3. ネックを掃除する / (1:15〜) 4. 新しい弦を張る / (2:19〜)
1. 古くなった弦を外す /(0:11〜)
齋藤 まず、ベースから古くなった弦を外します。ペグを回して少し弦を緩めたら、ニッパーを使ってブリッジのあたりで弦を切ります。
2. ボディーを掃除する / (0:46〜)
齋藤 ボディーの掃除は基本的に乾拭きでOKです。もし持っていれば、毛の柔らかい刷毛(はけ)があるとボディーについたホコリを取り除く時に便利ですね。ウエスで全体の汚れを拭き取ったら、クロスで丁寧に磨いて仕上げます。
齋藤 ブリッジやペグは刷毛や綿棒などでパーツについたホコリを取り除き、その後ウエスやクロスで拭いてください。
3. ネックを掃除する / (1:15〜)
齋藤 ネックは演奏中ずっと指が触れている場所なので汚れやすいところ。特にフレット周りと指板の汚れは放置せず、こまめに掃除しましょう。
齋藤 フレットの縁につまようじを当てて、こするようにして汚れを取り除きます。木製のつまようじは、適度な硬さで指板に優しいですし、先端が尖っていて汚れを落としやすいです。 金属などの硬いもので指板をこすると、塗装が剥げたり指板が傷ついてしまいまうので、マイナスドライバーやカッターなどは使わないほうがいいですね。
齋藤 次に、指板の掃除。道具の選び方でも触れましたが、石油系のオイルは扱いに注意が必要です。できるだけ石油系成分が無添加のオイルを使うようにしましょう。 バーチーズでは石油系成分無添加のビッグベンズ(Big Bends)のオイルを使用しています。こういったオイルがない場合は、市販のベビーオイルなどでも大丈夫です。
齋藤 指板用オイルをウエスに含ませ、指板を磨いていきます。オイルを使うときは少しずつ。つけすぎには注意してください。
4. 新しい弦を張る / (2:19〜)
齋藤 ボディーとネックの掃除が終わったら、最後に新しい弦を張ります。まず、弦をブリッジの穴に通します。
齋藤 今回、弦を交換するベースのペグは上から弦を差し込むタイプで、弦を巻く回数は3巻きくらいがベストです。弦を巻くペグから、ヘッドの縦幅分(およそ15cm)を残して弦を切るとだいたい3巻き分になります。手でヘッドの縦幅を測って弦を残す長さを決めたら、弦を折り曲げ、折り曲げた少し先のところで弦を切ります。
齋藤 弦を切ったら先端をペグに入れ、手で少し巻きつけます。
齋藤 次に、弦を軽くつまんだ状態でネックからブリッジに向かって滑らせ、弦のねじれをとります。弦をまっすぐに張ることで音も良くなりますし、チューニングが安定しやすくなるので必ず行ってください。
齋藤 弦のねじれをとったら、ペグを回して弦を巻きます。巻き数は多少多くても問題ありませんが、ペグの根元に弦がついてしまうと摩擦になってペグが回しづらくなるので、巻いた弦とペグの根元には少し隙間が残るようにしましょう。
齋藤 お疲れ様でした!これで、ベースのメンテナンス完了です!はじめのうちは少し時間がかかると思いますが、慣れれば一連のメンテナンスを素早くできるようになります。いつでもいい音でベースが弾けるように、こまめにご自分のベースをメンテナンスしてあげてくださいね。
バーチーズから楽器初心者の方へのメッセージ
千葉 高額な楽器をたくさん置いているバーチーズは、みなさんにとってちょっと敷居が高いお店かもしれません。でもリアルにお店を構えているのは、お店が「楽器体験の場」と考えているからです。 ヴィンテージギターやベースがショーケースに収められた他店とは違って、バーチーズでは実際に楽器を試奏してその楽器についてどんどん知っていただくのをポリシーにしています。高い楽器でも試奏をするのはタダですから、初心者の方でもどんどん体験しに来ていただけたら嬉しいです。 若い方は特に、「この楽器には自分には不相応なので……」と考えてしまいがちですが、楽器の良さは弾いてみたり触ってみないとわかりません。ベテランの方でも初心者の方でも「あっ、こんな凄い音があったのか!」と感動して、楽器への憧れを見つけていただくことが大事だと思っています。バーチーズがそんな素敵な場所になってくれたら嬉しいですね。
Guitar Shop Barchie’s(バーチーズ)
2014年7月にオープンした北新宿のベース/ギターショップ。
大手楽器店としては初となるベース専門店の立ち上げから関与し、専任として17年間勤務してきた千葉俊之さんが独立して設立。
大手楽器店のリペアー専属として10年間勤務し、数多くのプロ・ミュージシャンの楽器を担当してきた修理・営業担当の齋藤大輔さんとともに営業中。
一線で活躍するプロ・ベーシストが来店しており、確かな楽器の目利きとリペアの技術には定評がある。
バーチーズ公式ウェブサイト:Guitar Shop Barchie’s
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