トランペットが入れる楽器可賃貸はごくわずか。専門仲介会社に紹介された音大生向けの楽器可賃貸に落ち着いた

エリア:
東京都練馬区
間取り:
1K
家賃:
8.3万円
建物:
楽器可賃貸(鉄筋マンション)
演奏時間:
8~23時

楽器可賃貸や防音マンションに住んでいる”奏でる人”を直撃!彼らは普段、どんなお部屋で練習をしているのでしょうか?また、愛用の楽器や好きな音楽のこと、どうしてその楽器を奏でることになったのかもお聞きしました。2回目はトランペットプレイヤーの高橋三太さん。奏でる人それぞれの楽器ストーリーとその音楽ライフに注目です。

友人の紹介で楽器可賃貸専門の仲介会社へ

この部屋は入居してから3年。1回更新して来年また更新するつもりです。いわゆる音大生向けの楽器可賃貸なので、楽器に関してはなんのトラブルも不満もありません。演奏時間は平日も土日も8時~23時。契約書には「23時までは楽器のことで苦情を入れてはいけない」と書いてある物件です。

じつはこの前に住んでいたのはピアノ相談物件でした。そこは”近隣とのトラブルは各自でやってね”というスタンス。だから、入居してお隣に挨拶と名刺を渡しておいたのですが、ある日「日曜日はピアノを弾かないでほしい」という連絡がありまして…。やっぱり日曜日に練習がしたかったので自分で部屋探しをしてみたものの、金管楽器が吹ける部屋はまったくない…。困ってミュージシャンの友人に相談したら、楽器可賃貸専門の仲介会社(メジャーハウジング株式会社)を教えてくれました。それがこの部屋というわけです。

トランペットは10歳から。小中高とクラシック、大学でジャズへ

トランペットを始めたのは10歳から。家に父親が昔吹いていたトランペットがあった…というのが始めたきっかけです。それと、通っていた小学校にオーケストラ部があり、有名な先生が指導していて大会などで成績をあげていました。兄と姉がここに入っていたので僕も…と入部したパターンです。

中学校では吹奏楽部に入部しましたが、大会に出られるほどの部員もいないし熱心な先生もいないから盛り上がりに欠けていました。それでも、ひたすら教本をやるという自主練を続けていたので、自分でもこの時期にトランペットが上手くなったと感じています。

トランペット 賃貸
高橋さん愛用のトランペットたち。手前列左はポケットトランペット、右はピッコロトランペット。後ろ列のトランペットは、左からコルトワ製、ヤマハ製、ニッカン製、ベッソン製。右はフリューゲルホルン。

高校時代はオーケストラ部でクラシックをやりましたが、そこでもコンクールがなく、次第に「コンクールに出たい」という思いが募りました。早稲田大学に入学した頃はコンクールに加えて「ジャズをやりたい」という想いが強くなっていたので、ビッグバンドのサークルに入部しました。運よく1年からすぐにレギュラーになれたのですが、そこからすごく忙しくなってしまって…。「YAMANO BIG BAND JAZZ CONTEST」などの大会がいくつもあるし営業演奏もたくさん。多いときは本番が年間で50回以上もありましたね。

ビッグバンドをやるということは、僕にとってはクラシックからジャズへの転向でした。小中高でのクラシックの素養はトランペットの基礎的な演奏技術を身につける上で必要であったけれど、ジャズをやり始めたときはそのニュアンスを練習するのがすごく難しかったです。クラシックのトランペットは「トーン…」って感じですごく響いて余韻が大事な世界。でもジャズはパリパリいかなきゃダメ、余韻はなしという世界。大学時代はこれを直すためにすごく練習しました。

トランペットには”アンブシュア”が重要

平日は仕事で23時までに帰れないことが多いので土日にまとめて練習しています。平日吹けないと音が出なくなってしまうのでたっぷり4時間くらいかけます。トランペットの場合は、唇が振動帯なので息を吹き込んで唇がうまく震えれば音がキレイに出るという仕組み。唇の感度が悪いとそのぶん遅れて音が出てしまうので、息を吹き込んだらいつでもプルプルする唇が理想です。

唇の最適なやわらかさをキープするためには、唇外側の筋肉”アンブシュア”が重要だといわれています。唇周りの筋肉を鍛える”ピート”という金管楽器演奏者向けの筋トレグッズがあって、音を出せない人はこれでトレーニングすることも可能です。口をクッと閉じるだけのトレーニングもあって、僕も平日寝る前にやっています。トランペットというと一般的には肺活量が重要というイメージがあるかもしれませんが、”アンブシュア”を維持するほうがじつは重要なのです。

トランペット 賃貸
高橋さんもアンブシュアを鍛える「ピート」を持っていました。

トランペットの魅力は、少ない音で存在感を出せること

トランペットは、あらゆる楽器の中で最も音の与えるプレゼンスが一番強いと言われています。僕にとっては小さい音・少ない音でも充分な存在感があり、バンド全体のニュアンスを決定づけることができるところが魅力です。また、最も大きい音が出せる楽器であるため、ビッグバンドにおいてもやはり支配力が強い。リードトランペットには音のキリとかを自分のタイミングでできて、みんなより長めに伸ばしていいという不文律もあります。そういうところもトランペットのかっこよさじゃないかな、と思います。

いま1983というポップスバンドをやっています。音はシティポップよりちょっといなたい感じ。バンドの近況としては、ムーンライダーズのデビュー40周年記念トリビュートアルバム(12月21日発売)に「ダイナマイトとクールガイ」という曲で参加しています。じつはポップスで管楽器を吹くのは結構つらいところがあります。初めから音がいっぱい鳴っているので音を出すのが大変だし、吹くところもあまりないですから(笑)。

トランペット 賃貸
3~12歳まで習っていたピアノも部屋に置いていて、コードの確認などに使っているそう。

「おいしいところできっちり吹く」、それがトランペットの本分

じつはトランペットは直観的な楽器ではあるけれど、情熱に任せて吹いちゃいけない楽器なんです。というのも「バテる」から。僕も調子に乗って最初から飛ばして吹いていると最後の大事な局面で高い音とかでかい音が吹けなくなってしまいます。トランペットを呼んだ人は「この曲の最後の一音を吹かせたい」から呼んでいるわけなので、残りの体力を計算し、その他のフレーズを犠牲にしてでも最後の一音を死守する必要があります。トランペットは、おいしいところできっちり吹くのが本分だと僕は考えています。

<作品紹介>

この記事を書いた人

編集部 中根
編集部 中根 さん

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